boom boom

 目金屋の店の飾り窓。近眼鏡、遠眼鏡、双眼鏡、廓大鏡、顕微鏡、塵除け目金などの並んだ中に西洋人の人形の首が一つ、目金をかけて頬笑んでいる。その窓の前に佇んだ少年の後姿。ただし斜めに後ろから見た上半身。人形の首はおのずから人間の首に変ってしまう。のみならずこう少年に話しかける。――

 前の射撃屋の店。少年はまた空気銃をとり上げ、今度は熱心に的を狙う。三発、四発、五発、――しかし的は一つも落ちない。少年は渋ぶ渋ぶ銀貨を出し、店の外へ行ってしまう。

ピストルやナイフを用ふる死は僕の手の震へる為に失敗する可能性を持つてゐる。ビルデイングの上から飛び下りるのもやはり見苦しいのに相違ない。僕はこれ等の事情により、薬品を用ひて死ぬことにした。薬品を用ひて死ぬことは縊死することよりも苦しいであらう。しかし縊死することよりも美的嫌悪を与へない外に蘇生する危険のない利益を持つてゐる。唯この薬品を求めることは勿論僕には容易ではない。僕は内心自殺することに定め、あらゆる機会を利用してこの薬品を手に入れようとした。同時に又毒物学の知識を得ようとした。

 小学四年。さくらの花はどんなくみたてになつてゐますか?
 小学五年。花崗岩はどんな鉱物から出来てゐますか?
 小学六年。海藻の効用をのべなさい。
 これは勿論詩と存じ候。殊に桜の花の「くみたて」などと申す言葉は稚拙の妙言ふべからず候。何か編輯上の手違ひとは存じ候へども、爾来かかる作品は文芸欄へお収め下され度、切望の至りに堪へず候。右差し出がましき次第ながら御注意までに申し上げ候。頓首。
  四月十三日     伊東にて